社内調整コスト

社内の人を説得して回るのは大事です。
特にいつも顔をあわせている人ではない人達の力を借りようとすると、
いきおい、エヴァンゲリストみたいになって方々を飛び回ることになる。
その調整コストたるもの、馬鹿にならない。

このトピックを語る時、常に想起される2つのポイントがある。
1点目は、プロジェクトを回す人は、そんな所で弱音を吐いて立ち止まるべきではないという点。
2点目は、組織を設計する人は、調整コストが高くつくように組織をデザインしてはいけないという点。

社内調整コストの高さは、プロジェクトが進まない時の言い訳になるべきではない
1点目。
このプロセスは時々かなり時間がかかる。
特に、以前のエントリでも書いたが、
売上に責任を持っていない人にAdd Onのお仕事をしてもらわないといけない時には調整コストが大きくなる傾向にある。

普段から顔をあわせている人だけでプロセスが完結する訳ではないので、
分業体制を敷いている大企業ではこういうプロセスは避けて通れない。

でもこのプロセスを通らないと、仕事が回らない。
それなのに「あの部署の人が反対なんで、できませ〜ん」なんて言ってるのはリーダーとしてものすごく情けない。
新卒入社すぐで、慣れてない内はしょうがないかもしれないけど。
社会人になって長いのに、時にはクライアントにさえも(!)こういうこと言ってる人をみつけると、
この人の下では絶対働けないな、と思ってしまう。

リソースが少ない中小企業に比べて、
リソースが社内にあることは大企業のアドバンテージなのだから、社内リソースは積極利用すればいい。
その時にある程度コストはかかるもの。
泣き言を言う前に、今の仕事をかたづけるプロフェッショナリズムが欲しいところ。
リーダーとしての本懐は、まずGetting things doneであるはずで、言い訳を探すことではない。
自分が社長だったら絶対そんなことは言わないはず。

とはいえ、そもそも調整コストを最小化するように組織を設計すべし
2点目。1点目は組織の中で働く人の話で、2点目は組織を設計をする人の話ね。
組織の中で働く人には、ある程度の社内調整コストをしょって働いてもらわないといけないのは上述した通りなんだけれども、
組織自体をデザインする時には、その調整コストが最小化されるようにデザインするべきだと思う。

まず、各組織構成員の仕事分割の単位は、専門性と汎用性をうまくバランスする均衡点にあるか、という点。
役割分担が大きすぎると、個別の領域の仕事に対する経験の蓄積が加速されない。
細かいところまで把握できない。
細かい点をぜんぜん把握している人がいなければ、ひょっとしたら役割分担の範囲が大きすぎるのかもしれない。

一方、役割分担が小さすぎると、他の仕事を担当している人との調整コストが大きくなりすぎる。
ワーキングレベルの人のはずなのに、何故かmtgばかりして一日終了っていう症状とか。
一般的に、そういう人はあまり自分でじっくり立ち止まって、
オーバービューを見直す作業に時間をとれていない傾向があると思う。
で、アドホックで場当たり的な作業を繰り返している傾向にある。
mtgに追われて仕事ができない本末転倒な状態。
社長ならmtgだらけでも仕方ないかもだけど。彼らはそれでも会社の将来のことをじっくり考えているのかな。
中小だったら、社長の"長年の勘"が突出していて、考えなくても超人的な能力でビジネスを回せている人もいるのかも。
社長のことはまだ分からないや。

次に、各組織構成員が相互作用する時のインターフェースの標準化にも配慮したい。
例えば相手の行動を要求する時に、どういう要素が決まればよくて、誰の承認がいるのかを定式化する。
これが何となくで決まったり、変更されたりしていると、それに振り回される人がでてくる。
不要なバック&フォースがあったり、
これなら、引き受ける・引き受けないで揉め事が起こったり。
ルールが決まることで、「あの部署の連中はいつも仕事を断りたがる。あいつらが怠け者だからだ」なんていう確執の芽を一つでも摘み取ることにつながる。

中小組織であればこんなのぜんぜん問題にならないかもしれないけど、
ある程度規模の大きな組織では、どういう情報を受取った時に初めて動ける、それがないと動けない、というのがある。
それがお互いにとってクリアになっているならいいんだけどね。
こんなの決めるのはワーキングレベルの仕事だろ、と言ってしまうのは容易だが、
そんな所でエネルギー使われるのは無駄。
実際の業務オペレーションをする人達に、
内向きの仕事を減らして 外向きの仕事に時間を使ってもらうのは、設計者の役割でもある。