リーダーシップの本質 堀紘一

名著。堀紘一が職業人生の中で学んできたリーダーシップのまとめ。リーダーシップに関しての彼の哲学が詰まっている。

リーダーとして、責任を果たすために行わなければいけないと彼が信じている内容が網羅的に記されているという印象。すごいね。よくこんなに気づいたね。彼が、リーダーに対して期待している高い使命感・責任がよく現れている。「リーダーは再考の責任を負う最終的存在である」とか「リーダーは常に孤独の中で責務を全うしなければならない」とかね。

身につまされる部分もあれば、ちょっとピンとこない部分もあり。多分に哲学的で実証的裏付けを明示しない傾向があるので(というか、彼の体験をベースにして書かれた本だから)、裏付けとなる経験を著者と共有していないと、「そうか!」と気づいたり、書いてあることを内面化するのが相当しんどかった。「リーダーは風のリズムを的確につかまなければならない」とかね。

一方、内容に関連の深い体験したことがある場合は、首肯できる内容が多い。自分の場合だと、特に1) フォーマルリーダーシップとインフォーマルリーダーシップとの差や、2) 事業を行う上でのパートナー選びの重要性・採択基準とか。


1) 一般的にリーダーと思われているのは、フォーマルリーダーシップを組織によって正式に付与された人。でも、組織を事実上引っ張っているのは、メンバーを惹きつけてついてこさせることができている人であることが多い。ベストなのは、事実上のリーダーになる資質を組織としていち早く見抜き、そういう人にどんどん組織をリードするチャンスを与えていくことだろう。
フォーマルリーダーシップを振りかざすのはよくない。部長としての業務命令だ、とか、社長の私が行っているんだから言うことを聞け、とか。そう言わないと自分の意見が通らないと思うのが背景にあるのだろうけど、これをやればやるほど、実質的には意見は浸透しなくなる。社員は表面的に服従するだけで、インフォーマルリーダーシップの原動力である信頼や尊敬が破壊される。
自分も働く上で、立場や地位を利用して相手に言うことを聞かせてきたことがあるように思い、反省した。できるだけ相手の理解とVisioningから初めて、納得による自発的な行動を喚起したいんだけど、過去100%はそれができてなかった。相手が心から納得して、賛同してくれて初めてその人の力が引き出せるのだから、できるだけフォーマルリーダーシップだけに頼るのは避けるべき。
これは厳しくする、しないとは全く別次元の話。相手にとって厳しい内容であっても、理解と賛同を得て、インフォーマルリーダーシップを維持・強化することは可能。自分に甘えないようにしたい。


2) ソニー井深大=盛田昭夫、本田が本田宗一郎=藤沢武夫によって成功したように、
1 専門分野や性格的に補完し合えること。
2 お互い正直でフェアで、尊敬し会えること。(なぜなら、新しい事業においてはどうしても衝突があるから。)
3 友情があること。
が必要ということだった。(2と3ってほぼイコール?)
その通りだと思う。同じ強みを持っている人と組んでも、視点が限られてしまったり、シナジーが出しにくかったりする。一方、専門分野や取り組み方・性格が違えば、その違いがシナジーを生み出すための強力な種となる。バックグラウンドが違うこともいいよね。そうやって、違う視点や経験がぶつかり合うことで、新しいものが生まれるんだと思う。ロケット工学 + 株式売買 で金融工学ができるとか。
でも、この違いは、必ず衝突を引き起こす。見方が違うんだから、当然かもしれない。パラダイムが違うのに衝突がない方が少ないよ。そういう時に、ベースとなる友情や、フェアネスに支えられた相互信頼があってこそ、衝突を乗り越えて新しい事業を生み出すことができると思う。
将来衝突を経験しても、それがシナジーの源泉となる意見の相違にあることを理解し、衝突を好機ととらえるマインドセットを涵養したい。

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