組織構造が与えるインセンティブへの期待と個人の持つインテグリティ(清廉さ)への期待 2007/05/11

なんやら難しいタイトルですが、一つご容赦を。

「あの人はプロ精神に欠ける」、「あの人のインテグリティの基準が低い」、「ずるいよね」など、会社で共に働く組織構成員に対する批判を聞くことがあります。新入社員の頃は自分もそのように思ったことがありましたし、同じような経験を持つ方もおられることと思います。

さて、このエントリでは、短く言えば「それって組織構造がちゃんとしたインセンティブを与えるような仕組みになってないからじゃないの?」と考えるようにした方が良いのではないか、という私の考え方を説明したいと思います。これは、望ましくない行動を組織構成員がした時に、その原因をその人の誠実さの欠如、インテグリティの欠如に帰属する考え方の対極を成します。

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抽象的な話をすると分かりにくいので、想像を容易にするために、具体的なケースを考えてみましょう。
・・・と書いてみたけど公開自粛 (ー人ー) 過度にVividな例になってしまいましたw
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ずるをする・やるべきことをしない、などの事について、冒頭で書いた通り、「あの人はプロ精神に欠ける」、「あの人のインテグリティの基準が低い」、「ずるいよね」と個人的資質について批判することは容易です。社内での個人的資質についての批判の応酬を行ったり効いたりしたことがある人もいるでしょう。しかし、自分の場合はこれは、インセンティブをうまく与える構造が作れていないからだ、と考えるようにしています。そのメンバーの内側に問題がある、と考えるのではなく、その人を取り巻く環境に問題があると考える訳です。

経験的に、この考え方には2つの利点があります。1つ目は、組織の構造や、結果の測定方法を改善するなど、具体的な改善行動を起こし易くなるという点、2つ目は、その人が嫌いになったり、ストレスを抱えたりしなくて済むという点です。

1つ目について補足します。会社の組織構成員の行動は、内発的動機と外発的動機の両方に端を発しますが、既に組織に入っているメンバーに対して、内発的動機付けをかえて頂くことは、不可能ではないにせよ、普通はちょっと困難です。内発的動機の定義は他者からの見返りを何ら求めることなく自発的な行動を起こす因子なので、当該人物の元々の人格や、今まで長年にわたって培われてきた累積経験に大きく左右されます。人によって意見は分かれるかと思いますが、私見では、内発的動機の低い社員を高い社員に変革させるのは難しいケースが多いように思います。(それを得意としているカリスマ的なリーダーも稀にいますが。)
一方で、外発的動機の操作はそれに比べて容易です。例えば、競合の簡易説明書を作る時は今チームの承認を必須にするといった方法や、簡易説明書ではなく、実際に競合が制作した広告と、自社商品の広告のサンプルを提示するという方法、また、今チームと将来チームのメンバーが1年ごとに交代し、将来チームのいた時に考えていたことを、今チームに異動した後で実施する仕組みにするといった方法などが考えられます。*3

2つ目については、人によって見方は感じ方が異なるかもしれませんが、ずるをした → それはその人が原因 → とんでもない奴だ と考えると腹が立ちますが、ずるをした → それをゆるす環境があった → 環境を変えよう という発想にすると、特に腹が立ちません。生理学上、ストレスホルモンの元は、危機的状況に遭遇した時に必要となる身体活動の高エネルギー代謝を助けるためのものだと考えられており、なにかの「行動」に昇華してしまうと、どうも体に悪さをしないように体感されます。

ここでのケースはXXXXX(自粛w)を取り上げましたが、本来あるべきではない行動 、例えばデータを約束の日までに出さない、責任を果たすべきはずなのに手抜きをしている、成功を横取りしたり、失敗の責任転嫁をする、など内発的動機・外発的動機の軸線上にある行動にも展開可能な議論かと思います。

という訳で、ちょっと長くなってしまったのですがまとめると、なにか期待に添わないことをメンバーがした時に、「そんなずるをするなんて、とんでもない奴だ」などと言ってインテグリティなどの個人的資質を批判するのではなく、望ましい行動を生むために必要なインセンティブ構造をどうやったら作ることができるのかを検討する方が、建設的なアクションにつながり易いし、ストレスも抱えなくて済むので、いいと思いますよ♪ というお話でした。

おしまい☆
えらくながい文章でしたが、ここまで読んで頂きありがとうございました。
グルメ情報エントリを期待して読まれた方、すみません w また再開します ^^/

以下注です。