安田雪 人脈づくりの科学

ネットワーク内の関係性と,その効果・含意について社会学からのアプローチをまとめて紹介している本.グラノヴェッターによるThe strength of weak tiesにも言及し,普段は密接なつながりがないが,貴重な情報源となる議論にも言及している.今の所までの研究に粗くだがキャッチアップすることができるだろう.原則として40程の命題が提示されている.

1. 未来が感じられる,継続性のありうる関係こそがネットワークである
2. ネットワークは数でなく質である.
3. 人間は自分の認知ネットワークでしか生きられない.
4. パーソナルネットワークは,自然にゆだねておくと同質的,高密度になる.
5. 密度の高いネットワークは情報収集能力が弱い.
6. 密度の高いネットワークは,頑健である.
7. 密度の高いネットワークは,空隙に乏しい.
8. 関係の強弱によって情報収集力は異なる.
9. 他者の関係を仲介出来る位置を占めよ.
10. 代替の無い位置を占めよ.
ビジネスの文脈で戦略的に人はこう構築する必要があるというには,自分がそこに存在しなければ関係そのものが崩壊しのように意図的な設計を行うことで,自分の位置の代替性が少なくなり,優位性がます.
11. 少しの努力で,世界は急激に拡がる.
12. 少々のことでは,周囲の密接な人間関係は崩壊しない.
13. 周囲の密接な人間関係は,ある程度頑健だが,ランダムさの限界を超えると急速に崩壊する.
14. ネットワークは普及・伝染機能を持ち,それは良きものも悪しきものも同様に運ぶ.
15. 異質な他者との接触を重視しよう.
自分との同質性が低いたちほど,自分が知らない情報を持っている可能性が高いという意味で,貴重な情報源となり得る.関係性はコミニュケーションの活動量を示す.
16. ブリッジは情報収集.情報発信に優れている.
17. ブリッジは壊れやすく,1年で9割が消滅する.
18. 誰が中心人物かは見方によって異なる.
19. 関係数・媒介性・近接性・不可欠性の区別が重要である.
媒介性はコミュニケーションを構成する能力を示す.近接性は最小限の人数によって多数の人に到達できる能力を示す.
20. 相談のネットワークは,組織規定度が従業員の職場意識と密接にかかわっている.
組織規定度という指標は,組織が規定するフォーマルな関係が個人のネットワークの内部にどの程度含まれているかを示すものである.
21. 組織での相談相手の選択は慎重に.
22. 情報交換は互恵関係.相手は多いほどよく,裏切りの抑止力になる.
23. 自ら情報収集し発信するハブに,情報は集まる.
24. 職場にいる人の組み合わせから上がる成果を評価しよう.
25. 50代からは,意識的にインフォーマルな活動を展開すべきである.
26. 他者との関係の中で,自分の存在は成り立つ.
27. 人間関係のマネジメント能力は,創造性や生産性と深いつながりがある.
28. 生産性の高い人間は多数の人を結び付ける.
29. 最先端の研究は,見えざるネットワークが推し進める.
30. 弱い紐帯は情報収集機能に富む.
31. 弱い紐帯は数が多い.
32. 関係に重複がなければ,情報は加速度的に拡散する.
33. 他者と構造同値の関係になるのは回避する
34. 隙間が多く,風通しの良い関係を構築する.
35. 仲たがいを調整するには,共通の敵になれ.
36. 身動きのとれないネットワークを断ち切り,指数的減衰を待つ.
37. ただし,関係からの離脱は最終手段とし,減衰が起こる可能性を見極めてからにする.
38. 関係は,優先的選択に支配されがちである.
39. 優先的選択にまかせておくと,関係は少数に集中し,大多数は関係を持たなくなる.
40. 自然に委ねず,常に微調整を繰り返す.

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