九州旅行

週末2日間九州に行ってきました。

1日目は朝9:30頃のSNA便に乗って羽田から長崎空港へ。長崎の市街地に着いたのが大体お昼前くらい。飛行機の直通便がある地方都市はこれ程までに近いものかと驚きつつ、初めての博多の街をてくてくと散策。東京に比べ緯度が低いこともあり、九州は温かいね。対馬海流も入ってきていることだし。
印象に残っているのは路面電車。古き良き時代の乗り物という感じがする。東京で残っている荒川線も、都心に比べればのんびりしたところを通っていて気持ちが落ち着くし、嵐山から四条大宮を結ぶ京都の嵐山本線も素敵だ。「蛍茶屋」行きと表示してあったけど、昔はここでも蛍を楽しみながらお茶を頂くことができたのでしょう。
街にも商店街にも人が多く、景気が良い印象でした。造船が盛んな街だしね。マクロ的な経済快復に連動して富が流入するフェーズにあるようだ。

続いて電車を乗り継いで川棚へ。友人大絶賛の占い師の館アンデルセンに行ってみる。行ってみてわかったけれど、どうやらマジック&喫茶店のようだ。御飯をたのんでふつーにカレーライスを食べてから待っていると、静かな微笑みをたたえるマスターがでてきて、数々のマジックをみせてくれる。20年も前から一日2回ショーを行っているみたいで、どれもとても完成度が高く、お見事。でも一番面白いのはマジックじゃなくて、マジックを通してマスターが話してくれる人生についての考え方とか、ものの見方。
25歳になったら、35歳まであっと言う間。35歳になったら45歳まであっと言う間に過ぎてしまう。実は時間を戻す方法が一つだけある。それは、10年後の自分をイメージして、そこから今の自分をみること。そうすると毎日を大切に生きられる、とかね。
よく考えたらカレーライスの600円しか払っていなかったけど、4時間近く楽しませて貰った。

その後温泉に入ってから、ハウステンボスの近くにある宿へ。深夜まで酒盛り、と思いきや、歩きまくったので疲れてすぐに寝てしまったのだった。

2日目は焼き物で名高い有田へ。枇杷のアイスなどを友人と頬張りながらローカル線で赴く。(そういえば、たらみの本拠地は長崎だったっけ。) 有田では九州陶磁文化館で陶磁器の作り方や歴史、コレクションを堪能した。江戸以前の物は色合いの鈍さや、デザインの洗練さがイマイチだけれど、明治・大正あたりから、徐々にモダンなデザインや、鮮やかなコバルト色釉薬がでてきて、美しい作品にもいくつか会う事ができた。古典には古典の良さがきっとあるのだろうけれども、自分にとっては酒井田柿右衛門のような、伝統を引き継ぎつつもモダンさのスパイスが新鮮さや緊張感を与えるものの方が合うようだ。他にも有田陶磁美術館、深川青磁参考館、ギャラリー有田などに足を伸ばした。こちらはまあまあ。

有田で焼かれる陶磁器なら有田焼と言うのだけれども、オランダやドイツに輸出するために作られた、西洋のデザイン様式を見よう見まねで作った有田焼は造形美や構造美が乏しい。海外ではそういったものが「Arita」や「Imari」と代表視されてしまうのは残念。どの地域でもそうだろうけれども、西洋の文様や構図は、一見特に意味もなく作られているように見えても、キリスト教の教義をシンボライズしていたり、ゴシックやロマネスクといった様式をハイブリッドに取り入れていたり、それなりの文化的、美術史的背景がある。そういった背景についての深い理解なくして模倣される美術品は、どうもデザインがやぼったかったり、フェイクのにおいがとれなかったりするようだ。同様にして、マイセンがアジアからの観光客へのウケを狙って十二支の飾り皿を作ったりしていたけれども、表面だけなぞった軽薄な「Das ist 東洋」な感じのデザインには興ざめだった。
大量消費・大量廃棄を前提とした大量生産プロダクトは別にしても、1000年残るすばらしいデザインは、諂巧の奴隷であるべきではないと思った事です。見る人にフォローするのではなく、見る人にフォローさせる美的魅力を備えるものが長く残るデザインでしょう。
(日用雑貨の分野ではブランドロゴやパッケージの配色までターゲット消費者の声を聞くけれど、これはまた別次元のお話。)

ギャラリー有田にはレストランが併設されいて、呉豆腐なるものを食べた。プリンとお餅の中間のような柔らかさで、杏仁豆腐のような光沢があって、ずっしりと濃密な味わい。コロッケのように衣をつけて油で揚げた調理方法もあり、珍しいと話しながら舌鼓を打った。佐賀牛のサイコロステーキもついた定食でボリュームは十分。米はこの1年でトップクラスの艶と風味。ふらっと立ち寄った酒屋さんで買った地元の紫蘇梅酒と一緒にかなり豪華なランチを頂いた。神戸赴任時代も感じたのだけれど、食文化の多様性は東京・大阪が日本国内では突出しているが、1品1品の完成度は圧倒的に地方に軍配が上がる。非常に満足度の高いランチだった。
長崎に戻り、有名な福砂屋のカステラをお土産に買った。

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