選挙とネット

選挙とネット

YouTubeに上がった外山恒一東京都知事選候補者)の政見放送、ご多分に洩れず、僕も見た訳ですが、興味深いと思ったのはコレ↓

 政見放送は、放映時間や回数が厳しく規定されており、ネット上で自由に投稿・再生される事態は想定外。公職選挙法ではネットを使った選挙運動を禁止しており、候補者や支援者が選挙を優位に進める目的で政見放送YouTubeに投稿すれば、同法違反に問われる可能性もある。

 都選管は、投稿したのは候補者以外の第三者だと見ており「違法かどうかは微妙」としている。だが「特定の候補者の映像だけが流れているのが、公正・平等な選挙という観点から問題」と考え、YouTubeへの削除申請手続きに乗り出した。

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0704/03/news048.html

時代後れもいいとこだね。
2005年の選挙でも、民主党のウェブサイトが選挙期間中に更新されている事に対し、総務省が警告を発している。
もっと前、自分が大学生だったころも、選挙期間中に民主党候補を応援するメッセージがメーリングリスト上に流れ、それが後で問題になっていた。
公職選挙法によると違反*1 ということだけど、今も昔も変わっていませんね。

ネットの選挙利用については民主党が複数回にわたり、法改正案を国会に提出してきたけれども、毎回自民を中心とした与党に阻まれてきたという経緯がある。民間の組織であっても、自分たちに振りになるような制度改革を促すことはなかなか難しいけれど、政治分野においてもこれは同じで、既に政権を握っている立場にいる自民党としては、今までの選挙方法が変わって自らの地位を脅かす恐れのある新規技術を認める訳にはいかないのだよね。

アメリカの制度の全てをそのまま日本に適応すべきだとは思わないけれど、2004年の大統領選挙でハワード・ディーン氏がblogを活用する事により、わずかな選挙資金で多くの支持を集めたことは記憶に新しい(大統領選挙敗退後も政治活動を続け、2005年2月には民主党全国委員会委員長に選出されている)。これも日本の現行制度からいえばNG。
また、元下院議長Newt Gingrich氏がyoutube上に自分のチャンネルhttp://www.youtube.com/newtgingrich を開設して、失言について弁明している。彼のチャンネルを見てもらえばわかるように、新聞やTVといった既存のマスメディアのフィルターを通さずとも、visitorの反応をダイレクトに見ることができる。政治家と有権者の直接対話のチャンネルが開拓されているというわけ。

一方で、インターネットを選挙に対してオープンにすることにはリスクも伴われる。今までとは違ったアプローチによる「世論捏造の危険性」が孕まれる(書き込み隊を導入すれば資本力勝負になる)。例えば失言に対する弁明をする背後で、「見直した」「もう許す」みたいな書き込みを大量にアレンジしておくと、そのページだけ見た人に「みんなもう怒りが納まったのかな」と思わせやすくなるよね。
また、民主主義の考え方からすれば選挙に行く人の数が増えることは良いことだけれども、今まで選挙に行かなかった人が選挙に参加することで、それだけ大衆迎合的な政治が横行する危険性が増すリスクもあるだろう。

勿論それらは分かるのだけれども、そういったリスクよりも、既得権益団体による過剰な影響力行使を放置しておくことのマイナスの方が大きいと思う。最も大きいのは高齢者とそれ以外の世代間の利益相反。他にも、医師会、農協、公務員の組合などなど、人口構成比に対して影響力の割合が極端に大きい集団は沢山あるね。利益を共有する団体が全く影響力を行使できなくなるのは政治的に健全とは言えないし、一方で利益共有団体の影響力が強すぎて、それ以外の人が薄く広くデメリットを被り続ける社会も健全ではないだろうけど、今の日本は後者に傾きすぎているような感覚がある。例えばそれは自民党の部会という形に現れていると思います。という訳で、既得権益の保護に偏りすぎた政治形態へのカウンターバランスとして、日本においてインターネットの政治・選挙への活用には可能性があると思うのだけど、どんなもんでしょうね。