先輩が後輩を教える職場を実現するには

仕事的に関わらない後輩を教えるインセンティブってあるの?
「ないよねえ。だって自分には自分の仕事がある訳だし。成長してくれたら自分の仕事を振れるなら話は別だけど、評価に関係ないことなんてやってる時間ないね。個人的に友好関係にあれば話は別だけど、それでも忙しい時は一番初めにde prioritizeするよ」、と思っている方、意外に多いんじゃないでしょうか。

これはこれで勿体ない。従業員個人個人には様々な情報がたまっている。業務プロセスの流れについて言語化された知識もあるだろうし、過去の分析レポートの蓄積、営業のサポートをもらう為のコツ、など様々。これは会社から見れば知的資産であるけれども、これを取り出して他の従業員が使用するチャンスが少ない。特に企業買収した後だったりするとね。知的資産を保有している当該従業員が、正しいインセンティブ・モチベーションを与えられないがために、利用が阻害される。工場の稼働率とか、歩留りとか、目に見えるものの投資回収には精を出すのは簡単。目の前で原材料の鉄板がプレス工程でひしゃげて使い物にならなくなってたら、誰のめに見ても無駄が分かるよね。一方、目に見えない資産の投資回収は遅れがちになる。

知的資産の形成は人月や金銭的投資の結果としてなされるものなので、応用が効けば効くほど投資効率がよいということになる。これはナレッジマネジメントの話だと思うのだけど、より広い意味では従業員モチベーションの議論に帰結する。

さて、どんな解決案がありうるか?
例によって内発的モチベーションと外発的インセンティブによる解決に分けてみましょうか。

1)内発的モチベーションによる解決
・そもそも教える事に意欲を持っている人を採用する
・Corporate EventとかOffsite mtgとかを実施したり、教えることの大切さを教育して、「教えたがり」の人材を育てる
・Corporate Valueの浸透を徹底して、いい財・サービスを顧客に届ける為には後輩もちゃんと教育しなければ! という気持ちにさせる。
・社内サークルや飲み会などをサポートし、informal organizationの形成を促進して、先輩後輩のEmotionalな紐帯を強くする。
・セクションヘッドが率先して、人に教える環境が大切であることのロールモデルとなる

2)外発的インセンティブによる解決
・よい教育役に後輩が投票。得票数や教育数にターゲットを設定し、査定時に業績を評価。
・社内通貨*1を発行し、教えてほしいこと・教えて上げられることをマッチングする取引システムを作る。マッチングシステムを通じて教育内容の授受を行う。教える側、教えられる側、それぞれが相手を点数付けし、その評価を透明化。(友人間できびしい点数がつけられるとは考えにくいが、ネガティブチェックにはなるはず。)

1の場合は特に、各プランの導入において部署トップによるコミットメントが必要なのは間違いないね。具体的には、教えるということの意味や重要性、上司が風土醸成に向けて果たすべき役割の理解をしてもらう必要がある。

1、2共通でいえば、具体的に教えるといってもどのように教えたらいいか、どのようにニーズを把握するか、どのようなステップで説明するか、どういったマテリアルを使って説明するか、正確に理解したかどうかをどのようにすれば正確に測定できるか、などなどのノウハウも仕組として整える必要があるね。ネットオークションのマーケットを作る為にはまずネットインフラをひかないといけないのと同じ。役割拡大をするのであれば、それに応じた心の土台を整えてあげる必要がある。


この話は前回エントリした「売上に責任を持たない人の低モチベーションをどう解決するか http://www.katoeru.com/2006/06/060615_how_to_motivate_those_who_doesnthave_direct_link_to_sales.html」の話の亜種。
前回は、売上に責任を持っていない人に、どのようにして動かすかという話で、理想的には社員全員が売上・利益に対して何らかの動機付けをもつように組織をデザインする、というトピックでした。動いてもらうには、まず動く理由を与えるところから、という議論にはいろんなバリエーションがありそうだ。