竹中平蔵 郵政民営化

郵政民営化―「小さな政府」への試金石
郵政民営化―「小さな政府」への試金石竹中 平蔵

PHP研究所 2005-02
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遅まきながら。郵政民営化を肯定する主張がよく分かった。文章もとても平易で読みやすかった。
あんなにComplicatedなことをこんなに誰でも読めるように書けるなんてすごいですな。

我流にものすごく単純化して忖度するに、郵政民営化のメリットは3つ。

1つ目は資金運用効率の向上できる事。

郵政は350兆円という巨大な資金を持ってる。これは3大メガバンクの資金合計よりも大きくて、日本の家計の全金融資産の約4分の1。ものすごく大きい。それなのに、現在は国債とか財政投融資とか政府系金融機関への貸し付けとか、ほとんど官にしか流れてなくて、運用が非効率なんだとさ。それを民間に流すことによってもっと効率的に運用できるようになる。

2つ目は、市場メカニズムにさらされることによる、競争力の強化・サービスの向上が見込める事。

親方日の丸の組織が、効率的な組織運営できる訳ない。民営化して市場メカニズムにさらされることになると、もっと頑張るようになる。加えて、例えば国際物流できないとか、そういった各種の規制から自由にしてあげることで、新しいサービスも生まれる。日本のコンビニは全国に4万店くらい。で、郵便窓口は2.5万個あるから、今のように郵便・銀行・保険だけじゃなくて、もっといろんなサービスを提供できるようになったらすごいじゃん。逆に今ってもったいないよね。資源を有効に活用しきれてないから。
(ちなみに、民営化では窓口サービス部門と物流部門・銀行部門・保険部門を4つに分離することにより、特定部門の収益が悪化しても他部門に悪影響が及ぶリスクを回避するような設計にする、と。)

3つ目は、国家公務員数を減らすことができ、小さな政府を作ることへの布石となるという事。

国がしなくてもいいことを国がしているという状態をなくして、少ない税負担で効率的に国家が運営されるようにするために、国家公務員の30%を占めている郵政を民営化しないで、他のどこから手を着けるんだ、という話。


なるほどね。2つ目はよく分かる。民間にいても社内で市場メカニズムにさらされにくい人はモチベーションも低いし、なんのAdd Valueもないんじゃん?と思うような状態だから、公務員だと尚更だろうなぁ。民間が市場メカニズムにさらされて努力すればいい話なのに、それを国がやることはないよね。

1つ目の資金運用効率はあまり実感がついてこない。普通なら10%とかの運用実績をあげられるはずのものが、1%とかになってるっていうイメージなんだろうけど。財政投融資とか自体の効率がわるいみたいな話にも踏み込めてたら面白いと思うんだけど、そこまで言い始めるとこの本の目的やターゲット層の説得のフローから外れてしまうしね。敢えて言及しなかったのだと思う。

3つ目はちょっと実感がないんだけど、ここを民営化せずにどこを民営化すんじゃい、ってことだよね。

もっと早く読んでおきたかった良書。これでニュースがもっと面白くなるよね。
opportunity areaとしては、煽動の仕方が足りない点だと思う。学者さんだからかなぁ。ロジカルなところはとても強くて良いと思うのだけど。読む人の大半はきっとふつーの民間の人で、ちょっと話題になってる郵政民営化問題に興味があります程度のものなのだろうから、もっともっと納得感をもたせるように随所に物語性を持たすとか。エピソードを散りばめるとか、構図を単純化するとかすればいいんだよね。大前研一あたりと共著にしてあざとさ150%とかにしたら、説得できる人の数がさらに増えると思います。今のでも冷静でとてもよいですが。