状況ごとに異なる効果的リーダーシップスタイル (2)

前回「状況ごとに異なる効果的リーダーシップスタイル」のエントリの続きでつらつらと・・。
理論を深めて、会社とかで実際に使えるところまで昇華できるようにトライしてみる!

前回言ったことを
Steph氏のコメントを入れて修正&まとめるに、、、

仮説
「体育会」出身のリーダーは、組織メンバー間で目的が共有されている程度が「高い」状況で、より高いパフォーマンスを発揮しやすい。
一方「サークル」出身のリーダーは、組織メンバー間で目的が共有されている程度が「低い」状況で、より高いパフォーマンスを発揮しやすい。

前は組織メンバーのDiversity*1が高いか低いか、で話をしてたけど、目的の共有度合いに変えました。

(*1 前と一緒の注:
Diversityってのは、語義的には多様性のことで、「当該組織の構成員が、人種や国籍や性別などの表面に見える差異をこえて、目的、考え方、価値観などの内面性においてどれほど分散があるか、」を意味します。表面に見える差異だけを取り上げて多様性を論じる人もいると思うけどねー。)


仮説の根拠
サークルに比べて、体育会では「勝つ」という目標をメンバーが共有しているという特徴を持っている。
→だから、その目標を達成する過程で、各個人の目的の違いとか衝突とかに、サークルほど神経質にならなくていい。
→Task Orientedな機能*2がより重要だから、体育会出身のリーダーはTask Orientedな機能はより発達している一方で、Socio Emotionalな機能*2は未発達なことがある。

一方、サークルは、体育会に比べてそもそも多様な人が多様な目的で集まっているため、そのなかでうまくマネージしていかなければいけない。
→だから、チームを運営するにあたり、たとえ全体の目的を達成する為であっても、その過程では各個人の目的や考え方の違いに配慮しないといけない。
→Socio Emotionalな機能がより重要だから、サークル出身のリーダーはSocio Emotionalな機能はより発達している一方で、Task Orientedな機能は未発達なことがある。

(*2 Task Orientedな機能ってのは、タスク遂行効率をあげるための効果的な意思決定をくだす機能とか、やオペレーションを率先してまわす機能のことね。リーダーの主要な機能の一つ。一方 Socio Emotionalな機能は、要はメンバーへの配慮。それぞれの立場や気持ちをを思いやったコミュニケーションをとったりね。これもリーダーの主要な機能の一つ。
いろんな研究において違う名前で繰り返し指摘されてます。構造作りの機能と配慮の機能とか、生産志向と従業員志向とか、課題遂行機能と集団維持機能とかね。浅学の知見では大体一緒。詳しくはBales 1950を見てちょうだい。)

まえは、単にそういう環境に慣れてんじゃん?みたいなゆるーい根拠だったけど、
今回は、その「慣れ」の内容をもっと深くした。体育会出身リーダーと、サークル出身リーダーでは、Socio Emotionalな機能とTask Orientedな機能それぞれの発達度合いなのでは? というふうに変えました。


役に立ちそうな含意
根拠の変化で、ここも変わってくる。
大分勝手に根拠を作ってますがw もしこれが正しいとしたら、どういう含意があるか。
1)リーダーの役割を果たさないといけないときに、自分がどの能力を高めたらいいのか、また、2)組織メンバーの目的共有度の程度別で、リーダーとしてどういうところに気をつけたらいいか、という含意がわかる。

1)
自分が体育会出身なんだったら、Task Orientedな機能は強くて、Socio Emotionalな機能が弱い可能性がある。
だから、例えば「目的が正しくても、一人一人立場がちがったら正論だけでは動かないよなー」と肝に銘じるとか、
みんなどういう価値観の違いがあるか確かめてみるとかしてみて、Socio Emotionalな機能を強化する。

一方自分がサークル出身だったら、逆にSocio Emotionalな機能が強くて、Task Orientedな機能が弱い可能性がある。
だから、タスクを最も効率的に達成するためには、意思決定において優柔不断ではだめだと自分を戒めるとか、
実際意思決定を数を多く経験させてもらうとか、そういうトレーニングが良いのでは。

2)
殆ど1) の繰り返しになるんだけど、目的を共有している程度が高ければ高いほど (例えば軍隊とか) 意思決定とか、オペレーションをごりごり前に進めるのがより重要。
一方、共有の程度が低いほど (いろんな目的を持った人がばらばらと集まってるほど) それぞれの人への配慮がより重要になってくる、と。
ただ、現実的には100%目標が共有されてることも、0%のことも少ないので、タスクか配慮かのどちらか一辺倒ではよくなくて、うまいこと混ぜて程度を意識的にコントロールできるのが強いリーダーなんでしょう。



全体に対する脚注。リーダーシップ理論の変遷とか。
リーダーシップ(03)〜リーダーシップのスタイルと状況の相互作用〜 でも書いたけど、
それまでの研究ではリーダーたるものタスク遂行効率をあげるために効果的な意思決定やオペレーションを率先してやらないとだめ(Task Orientedな機能を果たすのがいいリーダー。 Bales 1950)、とか、メンバーへの配慮ができていいリーダーになってる人もいる(Socio Emotionalな機能を果たすのもいいリーダー。 同じくBales 1950)、とか、いやいや両立するほうがいい(Fieishman, 1973とかSorrentio and Field, 1986)、とか言われてきたんだよね。
でもFiedler 1965 は早くから Task Orientedな機能とSocio Emotionalな機能の両方が必須というわけではなく、
リーダーがおかれた状況によって効果的なリーダーシップのスタイルが異なるんですよ、と言ってた。
このFiedlerと同類型の主張が Contingent Theoryというわけ。

Bales, R.F. (1950) Interaction Process Analysis: A method for the Study of Small Groups. Chicago, IL: University of Chicago Press.

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Fiedler, F.E. (1965) A contingency model of leadership effectiveness, in Berkowintz, L. (ed.) Advance in Experimental Social Psychology, vol. 1. NewYork: Academic Press. Reprinted 1978 in Berkowitz, L. (ed.) Group Processes. New York: Academic Press.

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Fieshman, E.A. (1973) Twenty years of consideration and structure, in Fleishman, e.A. and Hunt, J.F. (eds) Current Developments in the Study of Leadership Carbondale, IL: Southern Illinois University Press.

Current developments in the study of leadership;: A centennial event symposium held at Southern Illinois University at Carbondale
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Sorrentio, R.M. and Field, N (1986) Emergent leadership over time: the functional value of position motivation. Journal of Personality and Social Psychology, 50, 1091-9