役に立つ性格学

役に立つ性格学
白石浩一
教養文庫

本の名前の通り.学問としての性格分析を、実際に活用できる形にしてある本.

前半ではユングの性格分類方法を採り上げている.思考の根本機能を
  思考
  │
感覚┼直観
  │
  感情
の4つに類型化し、どの機能が主要なものであり、また、それぞれの機能が内向きか外向きか、によって4(思考・感情、直観・感覚)×2(内向的・外向的)の性格分類が出来ることを紹介している.質問表で自分の性格を知ることができ、それが自分の実生活に対してもっている含意についても触れている.
例えば、外向的思考タイプのあなたは
  1)主義・主張・意見・ものの考え方など、自分と異なった人であっても、排斥せずに許容すること
  2)情緒的なこと、非合理的なことに対して理解を持つこと
  3)人間的な温かみを持つこと
が大切です、などという有り難い(?)提案も掲載されている.

ユングの心理学は僕が大学で学んだものとは違う系統に属している.仮説検証のプロセスや、反証可能性をもった命題の蓄積で学問体系を形成する立場からすれば、ユングの心理学は眉唾物に映りがちだけれど、彼が特筆すべき観察力の鋭さを持っていたことに関しては、認めるのがフェアだろう.

後半ではエルンスト・クレッチマーの性格類型を紹介している.即ち、内向的気質・同調的気質・粘着性気質・自己顕示性性格・神経質性格の定義と細目、判定するための質問リスト、外見上の特徴などの説明がある.一人の人間の中に複数の性質の混淆を広く認めているモデルのように思えて、僕にとってはクレッチマーの分類がよりしっくりした感がある.

本書の末尾にある性格ごとの職業適性や結婚の相性などは、データに基づいている様でもなく、主張についても全体として妥当性が感じられなかったが、性格の分類を色々な角度から採り上げている点や、豊富な心理尺度、それぞれの性格の類型化など、読んでいて面白い.

役に立つ性格学
役に立つ性格学白石 浩一


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