読書術

加藤周一 岩波現代文庫

大好きな作家でもあり、タイトルにも興味を覚えたので読むことにした。加藤さんは都立中央図書館の館長をなさっていたこともあり、読む前から大いに楽しみにしていたが、やはり期待に応える本であった。
よく言われる眼球の動かし方とか、パラグラフリーディングなどの速いスピードで読むことだけを主眼に置いた速読には一部しかページを割かず、本との付き合い方をかなり包括的に論じている。遅く読むのが良いことが適した本(古典)の存在や、それを読むのは価値があるということ、日本語で書かれた本の特徴と理解して読む速読(眼球云々ではなく、日本語に特化した内容)や、必要な本だけ読む、裏を返せば本を読まないで済ませる方法、外国の本を読む方法(お得意の翻訳論もあり)、難しい本を読む読解方法(著者が悪い場合もあるとか言葉の明確な定義と具体例に置き換えた理解など)等々もりだくさん。後書きでは外国での読書と、読書の「愉しみ」。

高校生向きに書かれたものらしいので、本との付き合いが一定以上長い人が無価値があるかどうかは人によると思うけど、さっきも述べた本との付き合い方を一通りまとめた名著。他の著作と同様に例示が上手でちょっとした言い回しが面白く、なにより帰納的な才能と論理的な説明が卓抜。

読書術
読書術加藤 周一

岩波書店 2000-11
売り上げランキング :

おすすめ平均 star
star一つの読み方として参考になる。
starかなり一押し!
star古典を読む=遅く読む

Amazonで詳しく見る
by G-Tools