勝新太郎と北野たけしの座頭市と用心棒 zatoichi yojinbo

勝新太郎座頭市と用心棒を観た。
座頭市」は勝新太郎、「用心棒」は三船敏郎というスター共演。
ストーリーとしても引き込まれるものがあったが、座頭市と用心棒が対決せざるを得ない状況の時の、二人の凄味のある演技は手に汗握る緊張感がある。


座頭市と用心棒
座頭市と用心棒
posted with amazlet on 07.06.24
東宝 (2003/10/24)
売り上げランキング: 19198
おすすめ度の平均: 5.0
5 あの描き方が……
5 闇の魅力
5 天才の芸

たけしのよりも勝新太郎座頭市の方がいいという人も多いみたいだけど、私見ではたけしの座頭市に軍配。ストーリー、表現手法の二点で、やはりたけしかと。モノクロvsカラーという違いも、原作vs応用という違いもあるので、単純にどちらがよいという事はあまり意味がないとは思うのだけど。

ストーリーでいえば、汚職ややくざ抗争の枠組みを浮かび上がらせるものという点では両者は変わらないが、勝のは座頭市へのフォーカスが強すぎて、用心棒がかすんでしまっている。勝監督の映画だから仕方ないのかもしれないけど、ストーリーの奥行きが物足りない。(座頭市の心理描写は詳しいし、決してストーリーの奥行きが狭いということではないのだけど、あくまでもたけしのと比較してのお話。) 一方たけしのは、座頭市と用心棒服部両方の心理的な背景や、今までの経験の蓄積、人生が描かれていて、映画の観客が2人の主人公の視点を再構成しながら見る事になる。用心棒服部の奥さんが不治の病に伏していたり、用心棒服部が殿前の腕試しで卑怯技を使われて破れてしまった過去に囚われている事とか。視点の単一vs複数性という点でいえば、勝のはドラクエっぽいのに対し、たけしのはFFっぽい*1。

表現手法でも、やはりたけし。殺陣(たてと読みます。チャンバラのシーンね。)のシーンの鮮やかさ、特に雨の中の決戦、刃のぞくっとするような金属感の表現、それから本人を金髪に染めちゃったギリギリの虚構感の駆け引き、ものすごくベタな黒幕をこらしめるラストシーンのすぐあとに時代劇タップダンスというお笑いライブで鍛えられた間合い。勝は殺陣シーンの撮影では死者を出したほどで、確かに殺陣シーンは素晴らしいのだけど、たけしは天才的にそれを乗り越えていった印象。勝の座頭市を観た事で、たけしのが凄さがより理解された。