On Your Mark ジブリ実験劇場

Chage&Askaの"On Your Mark"という曲のPromotion Videoとして製作されたショートアニメ。ジブリ実験劇場の作品。核によって地上が汚染されてしまった未来、カルト教団から政府機関に連れ去られた「翼の生えた少女」を、Chage&Askaそっくりの警官2名が救出に向かう。

Chage&AskaのBGMとの調和、映像の美しさ、ストーリー、テーマ、素晴らしい作品。短いけど、ジブリのファンタジーとしてはナウシカラピュタに並ぶ名作だと思う*1。ゲド戦記は・・・観てないのでよく分かりません。あまりよい評判は聞かないけどこはいかに*2。

ジブリ実験劇場 On Your Markジブリ実験劇場 On Your Mark
CHAGE&ASKA 宮崎駿

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ネタバレ注意。

テーマ:
テーマは囚われた天使の救出。テーマのアイデアとしてはルパンのカリオストロの城などとも類似するよね。救う側が男性で救われる側が女性というのはやだという人もいるかもしれないけど、無垢な者への保護とも、恋愛感情とも区別しにくい感情が主人公を駆り立てるテーマはやはり普遍的魅力があると思うし、僕自身も好きなテーマです。
これにさらにストーリーのひねりが加わると、相手をを救おうとすることによって自分も救われる、みたいなテーマになる。映画マイノリティレポート*3 は後者のパターンだよね。他にもあるかな。

ストーリー:
ここが実験的でとても興味深い。映像表現の項目で言及した方がいいのかもしれないけど、映像の尺を曲にあわせる必要からか、複数のシナリオ (警官が途中で殉職してしまったり、無事に天使を救出したり、逃亡するトレーラーが壊れてしまったり) の映像が複数錯綜して表現される。マルチエンディングにして結末の解釈の可能性を与えているようにも見える。
個人的にはハッピーエンディングの話の解釈が好きです。

表現手法:
まず、ジブリの作品としての映像美があることは誰もが認めるところだろう。ハッピーエンディングシーンの一つである、核汚染をぬけた広い緑地で、ヒロインが空に舞い上がるところなど、鳥肌モノ。
あと、音楽のPromotion Videoとして製作されたものなので、当然音楽は"On Your Mark"で、登場人物にセリフはなし。効果音はあるけど。にもかかわらずカルト教団への警官隊の突入、翼の生えた少女の発見、主人公の警官たちの躊躇、決意などに関わる心理が余すことなく表現されている。流石ですね。

キャラクターデザインの観点で言えば、ナウシカon your markには類似性がある。カルト教団のヴィジュアル表現は、ナウシカのコミックバージョンの、神聖皇帝の部下のヒドラのビジュアル表現に近い。また、「翼の生えた女性」というコンセプトも、ナウシカメーヴェ(ナウシカが乗ってる一人乗りの凧のような飛行機ね。)を彷彿させる。っていうかそもそもヒロインの顔が似すぎw。なので、こういった類似性を元に、on your markナウシカの世界の前、もしくは後の世界ではないかと言う人もいる。原作と監督が一緒だから、という解釈もあるかもしれないし、ナウシカとのつながりを意図したのかもしれない。

実はon your markのPVはVHSしかなかった時代に購入したんだけど、その後Chage&Askaが契約会社を変えたりして、しばらくこのフィルムはマーケットから姿を消していた。今は「ジブリがいっぱいSpecial ショートショート」というフィルム集に入って無事に発売。利権のコンフリクトなんていう下らない理由で、on your markの様な芸術作品が消失しなくてよかった。

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