サムサッカー

観てきました @ シネマライズ渋谷。

監督 マイク・ミルズ
脚本 マイク・ミルズ
原作 ウォルター・キルン

ニューヨークのスラム街で、誰からも愛を受けずに育った少年サム。彼はある日、自分の子供に厳しく接した結果として、子供を死に追いやってしまったという自責を背負った元サッカー監督と出会い、偶然サッカーを教えてもらうようになる。監督に対する反抗心と愛着の間で戸惑いつつも、監督と、サッカーを通じてできたスラム外の友達との触れ合いの中に、生きる喜びを発見していく、という話。かと思いきや、「親指しゃぶり」という意味で"Thumb Sucker"ね。とんだ勘違いでヒューマンドラマを想像していたが、本編のストーリーは全然違った。そりゃあそうだろうw

アメリカの映画なんだけど、ハリウッドっぽいごり押しがなくて好感がもてた。精神的に安定するために親指をしゃぶったり、しゃぶってはだめだと歯医者から暗示をかけられたり、多動性注意欠陥障害と診断されて薬で治したり、実は地頭がよくて弁論サークルで活躍したり、恋人が麻薬をやり始めたり、母親が浮気をしてるんじゃないかと思いつつ実は違ったり、父親とケンカしたり背景が分かって仲直りしたり、なんかなんじゃかんじゃの思春期たった96分。

でもじわーっと面白かったです。人生を追体験するようで。そもそも人生に一貫したテーマに基づいて物事が起こるなんてことはないんじゃないか。Steve Jobsのように様々な体験をつないで人生が紡がれてきたことが分かる、とか晩年に追憶の話をする人だって、実は色々関係ない経験をしたりしているはずだ。脈絡のないいろんなことが起こることを、間延びした映画、と批判する人もあるかもしれないけど、テーマに基づいて再構成されたストーリーじゃない生の体験を追体験させたかったんじゃないだろうか。こと監督は。