Winny裁判 煙草裁判

久しぶりに現代社会カテゴリでエントリ。

インターネット上でデータのやりとりをするファイル交換ソフトWinnyウィニー)」をめぐり、著作権法違反幇助(ほうじょ)の罪に問われたソフト開発者で元東大大学院助手、金子勇被告(36)の公判が4日、京都地裁(氷室眞裁判長)で開かれた。弁護側は「匿名性と効率性を両立した新しい技術の検証が開発目的であり、著作権侵害の意図はない」として改めて無罪を主張し、結審した。判決は12月13日に言い渡される。
 弁護側は最終弁論で「ソフト自体に違法性はない。ソフトを開発、公開しただけの被告を、(ソフトを)悪用するユーザーの幇助犯に問えない」と主張。「今回の起訴で、あらゆる技術者が不明確な幇助の可能性に萎縮(いしゅく)し、日本の技術革新への大きな足かせになっている」と現状を指摘し、捜査を批判した。
http://www.iza.ne.jp/news/newsarticle/event/17847/
っていう訳で、Winny開発者である金子氏に対する判決が12月に言い渡される訳だけど、どうなるんだろうね。

大抵のツールには、それ自体に善や悪が内在する訳ではなくて、
それを使う人の使い方次第で社会にとって良い影響があったり、悪い影響があったりするものだ。
包丁がなかったら美味し食事が作れないけど、包丁で人を指してしまう人もいる。
核技術の功罪。原爆では合計約20万人が死亡、今後も増えるかも。でも一方で原子核の結合エネルギーを開放する技術が手に入った事で原子力発電所ができた訳。
自動車の功罪も明白。
銃の功罪(これで身を守れる人もいる訳だよね)、
変わったところでは、家にあるプールの功罪。銃で死亡するリスクよりも、家にあるプールで溺れ死ぬリスクのほうが高いとかなんとか「やばい経済学」で言及していた気がする。

ただ、今回彼は2ちゃんねるの中で、ファイル交換している人たちに対して新しいアプリを提供してあげるよ、
と言っていた訳で、明らかに違法行為を幇助する意図があったことは明白。
情報技術自体の知的財産のあり方について、考えた結果であっても
それが既存の法律に抵触していた以上、法律上なんの問題もないとは言い難いだろう。
法律は素人ですが。

加えて、自動車や包丁がほとんどの場合、本来の目的のために使用されて社会的価値を創出しているのに対して、
Winnyはほとんどの場合、違法行為に使われているよね。
そもそもがこういう設計思想なんじゃないの? 違法行為を幇助することを目的として作ってるんじゃないの?
と言われても仕方ない気がする。
具体的な罪状は別にしてもね。


じゃあ、殆どの場合において、社会的価値を減じる結果をもたらす煙草についてはどうなの?という疑問がわく。
アメリカ癌協会http://www.cancer.org/によれば、

肺がんの原因の87%はタバコ
癌による死亡の30%はタバコが原因(肺がん以外にも、タバコは、声帯、喉、食道、口腔などの癌の原因にもなる上、膵臓、腎臓、胃等の癌もタバコによって悪化する)
全米で毎年43万8千人がタバコを原因とする疾病により死亡。これは、酒・事故・自殺・AIDS・殺人・麻薬による死者全部を合わせたより多く、死んだ人の5人に一人はタバコが原因。
という恐ろしい社会的マイナスが指摘されている。


アメリカでは煙草業界に対する集団訴訟が可能になったため、業界が壊滅する危機に瀕していると言われている。
http://www.businessweek.com/bwdaily/dnflash/content/sep2006/db20060926_839904.htm?chan=top+news_top+news+index_businessweek+exclusives
法律リスクが折り込まれた結果、煙草関連銘柄の株価も下落しているが、
上の論理でいえば、殆どの場合マイナスの社会的価値を生んでいる煙草は、
訴えられても仕方ない、ということになる。

情報化社会で知的財産の共有方法について、
法律がドラスティックに変わらないのは
声の大きい既存のコンテンツビジネス事業者が反対する力の方が、
まだまだ無数の個人よりも強いからだと思うけど、
煙草の場合は、個人が被害を受ける害悪の程度が大きい事と、
医療保険という煙草の害の逓減について強い経済インセンティブを持つ大プレイヤーがいるので、
知的財産の話よりも裁判や、その結果としての法解釈の変遷のスピードが早い傾向にあるのだと思う。

僕の周りには結構たばこを吸う時に周りに気づかってくれる人が多いのでまだよいのだけど、
それでも、そんな人たちの健康が煙草で害されていると思うと
心穏やかでいられる訳ではない。
日本でも煙草の追放運動が進展して、禁煙に成功する人が増えるといいな。

しばらく時間が経てば、知的財産の共有に関する法律も変わるでしょう。
どんな法律がでてくるのか今から楽しみである事です。

なんか徒然なるままに書きすぎたので今日はこの辺で。