人生は、時々晴れ (2002/英=仏)

人生は、時々晴れ (2002/英=仏)
All or Nothing

うーん 暗い.. 長調の音楽が一つもかからなかった徹底ぶりがすごい.ここまで徹底されると逆に,よし俺も頑張るぞ的な気持ちになるほど.


イギリスの下級労働者階級の家族.夫と妻と息子と娘.夫はタクシーの運転,妻はスーパーでのパートと内職.息子は無職かつ引きこもり..娘は老人ホームでの清掃の仕事.妻以外はかなりの肥満.どうしようもなく貧乏で,諍いが絶えない.

人生は、時々晴れ人生は、時々晴れ
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******以下ネタバレ注意*******

******以下ネタバレ注意*******

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妻のパート友達2人もそれなりに厳しい生活.精神的にも厳しい.それぞれ娘がいるが,一人は相当酷い男の子供を妊娠してしまう.もう一人の娘も孤独から誰でもいいから温もりを求める.
タクシーの乗客として登場する映画唯一の上流階級の女性も離婚を経験している.

全体を通じて本質的に孤独でない人物が登場しない.ひょっとしたらそれが制作者のメッセージだったのかもしれない.All or Nothingが邦題では時々晴れとなっているが,ハッピーエンドとも,そうでないとも解釈できるラストをハッピーエンドに解釈させてしまいそうであまり好きではない.
孤独と孤独故に他人を求めて埋め合わせるが,結局一人で生まれ一人で死んでいくというお話.夫婦が愛を取り戻すかのようなシーンがあったが,実はセリフがすれ違っていたようだったが...???

演技・演出などは卓越した素晴らしさがある.今回も脚本はなく,半年間のリハーサルとディスカッションを重ねて,俳優たちに即興で演じさせ(!),それぞれの見事な人物像を完成させたという.マジっすか.異様なまでのリアリティの高さも納得できてしまう.

名優と名監督&スタッフだらけなのだろうが,コアとなるストーリーは,メッセージは理解できるのだが,結局感情移入し損.家族の絆が一瞬取り戻されたかのように見えるが,妻が夫を再び愛することはないんだろうなー,とかなり脱力なエンディング.
他の家庭の不和や,自閉症気味の娘の回復などには言及全く無し.鑑賞した後味の悪さの原因の一つ.
ストーリーは嫌いだったが,見せ方があまりに巧妙なので,また観ると思う.

「この映画はラストシーンでドラマティックな結末を迎えるが、終わった後も、私はその作品が観客に考えるような余地を残していることが大切だと思う。見終わって幸福な気持にさせてくれるものの、その後、2度と考えることがない映画より、心にずっとひっかかる作品の方が価値があると思う。だからといって、私は自己満足のために映画を作っているわけではない。世界中のあらゆる観客に見て欲しいと考えているよ」
という監督の狙い通り.
なかなか良い.