A Clockwork Orange

時計じかけのオレンジ
イギリス 1971年
監督:スタンリー・キューブリック
製作:スタンリー・キューブリック
原作:アンソニー・バージェス
脚本:スタンリー・キューブリック
撮影:ジョン・オルコット
音楽:ウォルター・カーロス

凶悪性を描いた作品.

主人公のAlexは標準的なイギリスの家庭に育ち、
Public Schoolをさぼっては夜な夜な仲間とつるんで暴れている不良。
性と暴力の衝動に駆られ、日々好き放題だったが、
ついに殺人を冒してしまい刑務所に入れられる。

時計じかけのオレンジ
時計じかけのオレンジマルコム・マクドウェル アンソニー・バージェス スタンリー・キューブリック

ワーナー・ホーム・ビデオ 2005-04-22
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******以下ネタバレ注意*******

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Alexが受けた新型の強制治療の結果、
彼は暴力・性・Beethovenの第9に拒絶反応を示すようになってしまう。

新型治療の結果、更正したと認められたAlexはわずか2年で釈放されるが、
あらゆる復讐を受ける。

登場人物一人一人のイカレっぷりが強烈。
所謂まともな人は一人も登場しない。
Alexの母親はキレてすぐに泣きだす。
父親は父としての威厳が全くない。
仲間、殺される人、Alexの教師、警察官、監察官、博士、作家、政治家、、
どれも狂っている描写。

前半ではAlexは強者である。
頭脳明晰、洗練された振る舞い、若く強靱な肉体、数の力。
強者であり、残忍な彼が、弱い他の狂った人を痛めつけて快楽を得ている。

後半ではAlexは腕力を奪われ、弱者になる。
洗脳治療の結果として、外見は普通の人間だけれど中身はただの機械(=clockwork orangeということか?)。
弱者になったことで、今度は他の人たちがAlexに復讐して快楽を得る。

Alexが新型の強化反応(条件反射)型心理治療を受けることで
弱い者になってしまう点では、
時計仕掛けのオレンジは一種のシチュエーション悲劇ともいえるだろう。

Alexは自殺を図り、脳への衝撃で生来の凶悪さを"回復"する。
そこでレイプの妄想映像と共に最後の独白。
"I was cured alright."と。

狂気を描いた悲劇作品としては秀逸。
暴力が作り出される構図。一対多、若対老。
クラシック音楽の使い方、目に宿る劣情の映し方、原色を使ったコントラスト、ストーリー展開、
どれを取っても実にスタイリッシュ。

それでも映画に一点物足りなさを感じるとすれば、
この映画での人間の本性に対する描写が、狂気一辺倒な所だろう.
この映画でAlexは凶悪性の解放と抑圧の狭間を行き来するが,
その彼岸には行けない.
狂気は道徳と対置された時に,より凄みが出るように思う.