児童虐待

厚生労働省「福祉行政報告例」(2000年)によれば、児童虐待に関する相談処理件数は、1990年の1,101件から、2000年には約16倍の1万 7,725件に急増している、とのこと。
http://www5.cao.go.jp/j-j/wp-pl/wp-pl01/html/13301200.htmlより

これはまずい。

まあ、
報告件数 =虐待の事実 × 報告する割合 (+ 小さいだろうけれど 虐待されていないけれど報告して認定されてしまうケース数 )
で、"報告する割合" が上昇しているっぽいので、
"虐待件数増加" だけが16倍とまでは言えないかもしれない。
しかし、それでもなお"報告する割合"の増加だけが16倍ということは考えにくく、
"虐待件数" も増加しているのだろう。

虐待が発生してしまう理由としては、
全国児童相談所長会「全国児童相談所における家庭内虐待調査」によれば
"経済的困難"、"家族、近隣、友人からの孤立"、"夫婦間不和"、"ひとり親家庭"
などが指摘されているが、どれも説明力が低そう。
(貧乏だからといって必ずしも虐待するわけではないし、逆に貧乏でなくても虐待する場合も十分あるだろう)

どういう要因がどういうパスを通って児童虐待に繋がるのか、
(例えば 自分自身虐待された経験があって、かつ経済的に困難な状態にあり、友人から孤立した場合に虐待が起こる、など)
科研費の予算が付いてデータを取らせて貰えれば
社会的に意味のある提言が社会心理から出来るのに。

もうすぐ卒業して就職する者が考えることではないかもしれないけれど、
独立法人化した場合に、このような企業からの資金回収が難しい調査が出来なくなるのは問題だと思う。

以下は中3男子生徒虐待に関する記事の引用。

<中3長男虐待>体重24キロ骨と皮に SOSにも手出せず 

 骨と皮だけになって救急車に収容された中3男子生徒(15)は、体重わずか24キロだった――。余りにもむごい大阪府岸和田市で起こった虐待事件。長男の部屋には布団がわりのブルーシートが敷かれ、そこに寝ていた体には激しい床ずれの跡。体液が流れ出す惨状だった。逮捕された実父の烏野康信(40)、内縁の妻の川口奈津代(38)の両容疑者の残虐行為については近所や学校もうすうす気づいていたという。だが、手を差しのべた人はいなかった。【野原靖、藤田文亮、佐藤孝治】

 府警の調べでは、日常的に虐待を加えていたのは川口容疑者だったという。川口容疑者は、気に入らないことがあると、たばこの火を押し付けたり、入浴後の風呂水に顔を突っ込むなどして虐待。さらに、夜中に無理に騒ぐよう強制するなどして、烏野容疑者から暴力を受けるよう仕向けていた、という。

 長男は長期間の飢餓状態がもとで、脳に重い障害が認められ、回復が困難な状態。それにもかかわらず、川口容疑者は逮捕後の調べに対し「長男は(保護の)前夜も『おやすみなさい』とあいさつした」と供述しているという。

 虐待には、近所の人も気付いていた。同じマンションの住人の男性は「寒い冬の未明、薄着のまま屋外に立たされていた長男を何度も見たが、しつけと思い注意しなかった」と声を落とした。周囲の部屋には長男が「ごめんなさい」と泣き叫ぶ声が響き、住人の中には異様な雰囲気に嫌気がさし、引っ越した人もいるという。

 一方、長男が通っていた中学校では、髪が伸び放題になったり、やせて顔色が悪くなるなど"SOS"の兆候があった。同校の校長は「担任が声をかけたところ、母親(川口容疑者)から『なんでそんなことを聞くんや。うちで虐待でもしてると思ってるのか』とすごまれ、担任が謝罪するはめになった」と説明した。また、府岸和田子ども家庭センター(児童相談所)の中塚恒子所長は「今となっては、虐待と疑った理由などを掘り下げて聞くべきだった。学校との連携不足は感じている」と話した。

◇立ち入り調査権の拡充焦点
 今回の虐待死事件で、地元の児童相談所は学校から長期欠席の相談を受けながら、中学男児の長男は体に壊死(えし)ができるまで放置されていた。

 虐待の疑われる家庭への児童相談所の立ち入り調査権は、児童福祉法に明記されながら戦後ほとんど実施されず、立ち入り調査時の警察の協力を明記した児童虐待防止法施行(00年度)以降ようやく増え、昨年度は全国で167件に達した。だが、今回のように家庭訪問しなかったり、訪問しても親の説明をうのみにして子供が死に至るケースは、義父らの暴行で7歳女児が死亡した01年の名古屋市の事件をはじめ後を絶たない。

 見直しの進められる児童虐待防止法で、立ち入り調査権の拡充は大きな焦点の一つだ。民間団体などで構成する日本子どもの虐待防止研究会などは「裁判所が(閉ざされた玄関ドアなどを)解錠する強制力も持たせるべきだ」と提言してきたが、厚生労働省が今国会に提出する児童福祉法改正法案でも、この点は明確な対応策が打ち出されないままとなっている。

 また、今回の中学男児のような養育放棄(ネグレクト)による虐待の相談件数は昨年度全国で8940件と過去最高に達した。養育する能力がありながら子供を拒絶する「積極的ネグレクト」は発見が遅れることが多く、心身の発達にも影響する場合があるといわれる。障害児がリハビリをしながら暮らす全国の肢体不自由児施設では、虐待を受けたとみられる入所児が半数以上の施設で計141人おり、52人が虐待で体に障害が生じたり、障害が重くなったことが判明している。

 今回の事件で、1年半以上もビニールシートの上で放置されていた長男の姿は、「(立ち入り調査を)拒否された場合の打開策がない」(児童虐待防止法見直し点を検討した厚労省専門委員会報告書)との行政の釈明が許されない現実を突き付けた。立ち入り調査に実効性を伴わせる具体策が早急に求められている。【児童虐待取材班】(毎日新聞




虐待児の"駆け込み寺"、NPOが都内に設置へ
 さまざまな理由で家庭や施設にいられなくなった子どもたちが、いつでもすぐ逃げ込めるシェルター(一時避難所)が今年6月、東京都内に作られる。子どもの人権を守る活動に携わる弁護士らが近くNPO(非営利組織)を設立する。

 DV(家庭内暴力)被害者の女性のためのシェルターはあるが、子どものためのものは全国初。子どもの虐待をめぐる学校や児童相談所の対応の遅れが指摘されている中、子どもが自分の意思で入ることのできる場所としても注目される。

 シェルターは「カリヨン子どもの家」と名付けられる。一軒家を改装し、最大約10人が利用できる。シェルターの細かな住所などについては、子どもの安全に配慮して公表しない。

 運営するのは、「カリヨン子どもセンター」(代表・坪井節子弁護士)。対象は、〈1〉虐待や体罰から逃れるために、家庭や施設を飛び出した〈2〉児童養護施設を出て自立した後、頼る人がいない〈3〉軽微な非行を犯しただけなのに、引き取り手がいないために少年院に送られてしまう――など、様々な事情で自分の居場所がない子どもたちを想定している。

 シェルターの運営資金は年間約500万円で、センターは資金協力も呼びかけている。問い合わせは、同センター設立準備会((電)03・3818・7400)。(読売新聞)