赤から

あかから と読む。渋谷にある味噌鍋のお店。かか辛いです!! 素人にはお勧めできない・・・

名古屋出身の友人は味噌鍋に慣れているらしく、10段階ある味噌鍋の辛さレベルの8番をオーダーすることを強硬に主張。(鍋は二人で一つ。)曰く、「大丈夫。とにかく大丈夫。」お店のコメントで、6段階の部分に「この辺でやめといた方が」というコメントがあるのに、8というのはあんまりだ。「大丈夫」というセリフを聞かされて、実際大丈夫だった事は稀である。「オイオイ、本当に大丈夫なのか、ジャック? http://www.foxjapan.com/dvd-video/24/index_frames.html」という捨て身のボケを無視して、「7番お願いしまーす!!!!」と元気のいい友人。8から1段階だけ下げてくれたようである。
(CoCo壱も名古屋発だが、名古屋系のチェーンは辛さランクが好きなのだろうか。)

程なくして運ばれてきた鍋には、油揚げやら豆腐やら豚肉などが色々入っている。普段なら具だくさんな鍋に喜ぶ所なのだが。火をつけて煮込んでいくと、次第に、薄い陶器によって外部から隔絶された内側の世界が全て赤く染まっていく。人間の視覚の解像度の限界まで迫るような真紅になったあたりで、だめだしで友人が「大丈夫!!」。いや、既に湯気で目が辛いんだけれども!! 目が辛いと言ってるのに大丈夫も何もないものだと思いつつも、一口いってみる。

・・・数秒間の意識の静寂。後、か、辛い!! もうパニックである。まるで熱燗で火傷したサルの様な狼狽ぶりである。涙は出るし、口は閉じられないし、人間の言葉にならない叫び声が出るし、実に滑稽である。何故お金を払ってまで、阿鼻叫喚の経験をしなければならないのか。意識が朦朧として、このまま食べたら原始仏教で言う所の「生命として燃えるべき薪」ウパーディセーサ(upaadisesa)がなくなってしまっていたに違いあるまい、などと考えた所からしばらく記憶が飛んでいる。気付いた時には、とりあえずは完食していた。うーん。意外にいけるものである。おなかは大丈夫だろうか。

その後に食べた芋アイスは天使のように美味しかった。さつまいもを蒸して温かいままペースト状にしたものに、冷たいアイスが覆いの様にかかっている。さつまいもの風味が活きている。イメージとしては、茶巾絞りにする前のさつまいものペーストの温かいものを、さつまいもとバニラを混ぜたアイスで覆う感じ。冷たすぎると舌が味を上手く識別できなくなるのだけど、ペーストが温かいために、アイスの味が普段にもまして楽しめる。また、アイス(を組成するミルクや卵やバニラ)の香りが、アイスの冷たさや触感を保ちつつも口に広がるので、かなり新しい感覚で美味しい。嗚呼。こんなに美味しいものが出せる店が、なんであんな辛いものを。。。(涙)

とにかくこのアイスは素晴らしく美味しかった。記憶にある中で最も類似性が高い経験が、子供の頃に食べたプリンである。子供の頃に、プリンを食べて至福を感じたことはないだろうか。とにかく今オレの世界には、このプリンだけだ、と思いたくなるほどの、例のあれである。学校から帰って、手を洗ってから一番に冷蔵庫を開けて、わざわざ白い陶器のお皿にプッチンして、右に傾けて、左に揺らしてみる。太陽の光が当たった曲面が黄金色に燃えている。じっくりと色彩を楽しんだ後に食べ始める。1日1つが限度だと決められているから、目を閉じ、舌の上でしばらく転がして味わいながら食べたことをよく覚えている。プラトンの時代にプリンがあったならば、真・善・美の世界に到達せんとする高次元の愛に並び、世界を満たすプリンへの愛も、彼はエロスと呼んだだろう。

このアイスは単体で食べたとしてもこのくらい美味しかったりするのだろうか。いや、やっぱりあれだけ辛いものを食べたからこそ、美味しさが強調されているのだろうか。辛&熱 + 甘&冷 → 激うま、という事か。まさにヘーゲルである。弁証法である。これは次回渋谷に行った時にチェックせねばなるまい。

随分と哲学的な思索に沈思させられたお店であったが、
店員さんはまあまあ。時々無愛想な程度。
禁煙席がないのが問題だけど、まあ混雑時でなければ気にならないでしょう。換気の風下にならないように座る方がいいかと。

5点中3.2点。だけど、鍋の辛さを調節したらもっと上がるかも。
アイスだけは5点中4.5点。単体で食べた場合は未チェック。

03-5456-9300